秋の喜び。収穫の恵みです。「笑いの酒を悲しみの盃にこそつぐべけれ」…どの連も豊かな喜びの言葉でいっぱいです。
秋は来ぬ
秋は来ぬ
一葉は花は露ありて
風の来て弾く琴の音に
青き葡萄は紫の
自然の酒とかはりけり
秋は来ぬ
秋は来ぬ
おくれさきだつ秋草も
みな夕霜のおきどころ
笑ひの酒を悲しみの
盃にこそつぐべけれ
秋は来ぬ
秋は来ぬ
くさきも紅葉するものを
たれかは秋に酔はざらむ
知恵あり顔のさみしさに
君笛を吹けわれはうたはむ
(大意)
秋が来た。
葉が一枚落ちたことにも秋の訪れを実感するのだ。
秋草の花に露がおりている。
風が吹くのは琴の音のようだ。
青い葡萄は今や熟し、紫の酒となった。
遅く咲く花も早く咲く花も運命は同じで、結局は霜をかぶってしまう。
こんな悲しい人生だからこそ、せめて楽しい酒を注いでこのひと時を楽しもう。
草木も紅葉し、まるで酒に酔っているよに真っ赤だ。
秋に酔わないものがあろうか。
そんな賢こぶったな深刻な顔をして、その実は寂しいのだろう。
さあ笛を吹いてくれ。私は歌おう。
秋の喜びです。収穫の恵みです。どの連も素晴らしい喜びの言葉で埋まっています。
「笑いの酒を悲しみの盃につぐ」…イキな表現です。ふさぎこんでいるところになみなみと酒をついで、まあ呑めということでしょう。陽気です。万葉集・第三、大伴旅人の「酒を讃むる歌」を踏まえているようです。
李白の漢詩や林芙美子の詩「命の酒」思い出しました。
「知恵あり顔のさみしさに君笛をふけ…」は、そんなしかめっ面しないでとにかく陽気に呑め!ワッと盛り上がろうということでしょう。
「一葉は花は露ありて」は、李子卿「秋虫の賦」の「一葉落ちて天下の秋を知る」をふまえています。
藤村に限らず詩人には酒好きが多いみたいです。やはり酒はインスピレーションの源といったところでしょうか。
李白「月下独酌」
曹操「短歌行」
↑特にこの二篇は酒好きの方にはオススメの漢詩です。
|島崎藤村 朗読|