島崎藤村『月夜』朗読mp3

しづかにてらせる
月のひかりの
などか絶間なく
ものおもはする
さやけきそのかげ
こゑはなくとも
みるひとの胸に
忍び入るなり

なさけは説くとも
なさけをしらぬ
うきよのほかにも
朽ちゆくわがみ
あかさぬおもひと
この月かげと
いづれか声なき
いづれかなしき


初版では「月光」。月夜を歌った風流な詩に見せて、 実は切実な恋の詩です。

島崎藤村は明治25年(1892)20歳の時に明治女学校高等科英語科教師となりますが、 教え子の佐藤輔子を愛し、自責のためキリスト教を棄教し 辞職します。

この詩には佐藤輔子の面影が影を落としています。

口では愛を説きながらそれを実践できない教師という世間から 一歩引いた存在である自分と、物言わない貴女と どちらがより悲しいのでしょうか(佐藤輔子は無口 だったといいます)、

「月影」を佐藤輔子、「我」を藤村と考えればわかりやすいです。

また、西行法師の「嘆けとて月やはものを 思はするかこち顔なるわが涙かな」を踏まえているとも言われます。

「『嘆け』といって月が私に物思いをさせているのか?いや違う。本当は 恋人を思う涙なのだが、それを月のせいにしているのだ」という 内容で、恋の歌を月の歌のオブラートに包んだこの詩とまさに着想が 重なります。

百人一首の86首目です。西行の歌にしては理屈っぽいと昔から不人気な 歌です。

若菜集」の挿絵には百人一首のこの西行の札が描かれていました。

再録しました。この日はえらく空気が乾燥してて声が枯れやすかったです。冬はヤだなぁ。

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