島崎藤村『初恋』朗読mp3
ドコモ・Sバンク→12

まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたえしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

わがこころなきためいきの
その髪の毛にかかるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

林檎畠の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみとぞ
問ひたまふこそこいしけれ



結い上げたばかりのあなたの前髪が林檎の樹の下に見えた。
その前髪に挿した櫛の花模様のように、貴方の姿は美しかった。

優しく白い手を伸ばし、貴方が林檎を一つくれる。
秋の実りの象徴のようなその薄紅の林檎は、貴方に恋をした最初の記憶となった。

思わず漏れた私の吐息が、貴方の髪の毛にかかる。
盃に酒を注ぐように貴方の清らかな優しさを恋の喜びに満ちて、受けとめよう。

「林檎畑の樹の下に自然にできたこの細道は、いったい誰が通ってできたものなの」と 、(それは私たちのせいであることを)知っていて敢えて訊ねる貴方のなんと恋しいことよ。



………
有名な「初恋」です。けっこう恥ずかしいですが、 思いっきり自己陶酔して朗読しなければイカンです。声を出そうと 意識するあまり勇ましい感じにならないように、そして「間」に注意して 再録しました。

第三連と第四連の間には長い時間経過があり、その間に二人は何度も 逢瀬を重ねるようなラブラブな関係になっているようです。

林檎のイメージはもちろん旧約聖書のエデンの園の林檎が念頭にあるのでしょう。

北原白秋にも「初恋」という詩があります。だいぶ初恋っぷりが近います。

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