ここから藤村の詩の世界に入っていけます。藤村は自らの詩篇を「ぶどうの実」に例えた上で、「味わいも色も薄い」と謙遜していますが…。
こころなきうたのしらべは
ひとふさのぶだうのごとし
なさけあるてにもつまれて
あたたかきさけとなるらむ
ぶだうだなふかくかかれる
むらさきのそれにあらねど
こころあるひとのなさけに
かげにおくふさのみつよつ
そはうたのわかきゆゑなり
あぢはひもいろもあさくて
おほかたはかみてすつべき
うたたねのゆめのそらごと
島崎藤村の処女詩集「若菜集」の冒頭の言葉です。「序のうた」とも。もとは「うたたね」の
序詞だったものに変更を加えたものです。自作の詩を葡萄に例えています。
再録です。自分の限界に挑戦するつもりで5時間くらいぶっ通しで朗読しました。後半はだいぶコクのある声になってきて自分でもビックリしました。
(大意)
これらは未熟な歌ですけども、心ある読者の手に摘まれて(鑑賞されて)
温かき酒として熟成するでしょう。
葡萄棚深いところにある紫に熟しきった葡萄とは比較になりませんが
心ある人の温情で、いくつかは棄てられず影に置いておかれるでしょう。
これらの歌は若く未熟ですから味わいも色も浅く、
大部分は熟していない葡萄のようにただ一度噛んで
吐き棄てられるようなものです。
うたたねの夢に寝言を言っているような、そんなはかないものなのです。
|島崎藤村 朗読|